「夢売り」という言葉をご存知だろうか。
夢を売る。なんとも胡散臭く、魅力的な言葉である。それは売り買いできるものなのか? 買えたとしたら何が起こってしまうのか? 現代小説でも始まりそうな響きだ。そういえば「夢売るふたり」というタイトルの映画もある。
ところがどっこい、残念ながら、この言葉はそういう綺麗な類のものではない。
「夢売り」──またの名を、「下着売り」。
要はブルセラのことである。
若い女の子がパンツを脱ぐ。脱ぎたてほかほか、芳ばしい香り(※個人の感想です)が鼻を突く。然るべき部分には然るべき汁が付着しており、オジサン達はそれに股間を熱くするのだ。まったく素晴らしいJapanese HENTAI文化である。きたねぇ夢だぜ。
テレクラがマッチングアプリやチャットレディへと姿を変えたように、ブルセラも店舗はその姿を消し、通販で行われるようになった。サイトにもよるが、基本的には女の子が個人で商品を出品し、おじさんは女の子と直接やり取りしてパンツやパンツ以外のものを買う。要はメルカリみたいなものだ。こんなメルカリは嫌だ。
夢売りの相場はパンツ1枚2000〜5000円である。パンツ以外のものも売れるため一概には言えないが、まぁ2500円くらいが1番多い価格帯なのではないだろうか。パンツ以外には何が売れるのかというと、タイツ、部屋着、制服、競泳用水着、使用済みマスク、愛液(?)、陰毛(???)、使用済み生理ナプキン(!?!?)などである。Japanese HENTAIの可能性は無限大なのだ。女の子にちょうだいと言えば往復ビンタ不可避のアレもソレも、今やお金さえ出せばワンクリックで買えてしまう。まさに桃源郷、夢の売買。素敵な国だね!
さて。
お気づきであろうか、これ、女の子側にとっては完全に錬金術である。さっき外にしていったマスク、昨日履いたパンツ、伝線したタイツ、これら全てが可燃ゴミから価値ある商品に早変わりするのだ。これを夢と呼ばずして何と呼ぼう? 金のなる木、蓬莱の珠の枝はここにあった。
ドンキホーテで1枚500円のパンツが2000円に変わるなんて、言わば絶対に儲かるせどり、割の良すぎる副業のようなものである。金が欲しいpjならこれをやらない手はない。私こと昼間の信号機もまた例に漏れず銭ゲバであったため、すぐさまサイトに登録をした。古物商許可証? なんのこったよ。
サイトを見る限り、女の子には2種類のタイプがいた。積極的にパンツの仕入れを行い月に30枚、つまり毎日分のパンツを確実に売り飛ばす「せどり」タイプ、そして不要になった下着や古着をゴミ箱代わりとばかりに売り飛ばす「断捨離ついでタイプ」である。「せどり」タイプはサイト内ブログ(写メ日記のようなもの)を頻繁に更新したり、顧客であるオジサンとメールを交わして親交を深めたりと、涙ぐましい営業努力の上に売り上げを保っているようであった。なるほど、ポンと出品しておけば売れるものでもないのか……。
私といえば筋金入りの横着者、メルカリも続かない怠惰の極みである。商品画像を撮って出品するだけでも面倒なのに、プロフィール画像用の自撮りの加工、えっちな自己紹介文、えっちな商品着用画像、梱包、発送……考えただけで気が遠くなる。そこで私は競泳用水着を1着だけ2万円で出品する、という暴挙に出た。断捨離をしていたら出てきたが、あれは買うと結構な値段がするので捨てるのも忍びない。マニアックな変態が有効に活用してくれるならまぁ可燃ゴミにするよりはマシというものである。
売れた。
しかも結構早々に売れた。
すごいぞ変態パワー。しかも「他にも競泳用水着を持っていればそれも買いたい」と言われた。面倒なのでその申し出は丁重にお断りしたものの、あぁ、競泳用水着に興奮する人間は実在するんだ……という妙な実感と、売上2万円を得ることができた。とんでもねぇや。私には使用済み競泳用水着に2万円出す人間の気持ちは分からないが、多様性の時代なので下手なことは言うまい。私は面倒なのでさっさと退会したが、メルカリが続くタイプのマメな女性諸氏は割のいい副業としてやってみてもいいのかもしれない。
ちなみに冒頭でチラッと書いた映画「夢売るふたり」だが、あれは結婚詐欺の話でありこんな低俗で汚ぇ下着売りとは何の関係もない。熱い風評被害をネットの海に放出するのは本意ではないので、一応書いておきたく思う。
この記事を書くに当たって「夢売るふたり」を視聴したが、邦画〜!ってかんじで私は好きだった。生々しくてドロっとしていて仄暗いかんじの邦画が好きな人間は好きだと思う。U-NEXTで見られます(ダイマ!)
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