今度はちゃんとしたガルバだった。
昼間の信号機は以前、ガルバの体入で失敗している。具体的にはピンサロに連れて行かれている(人間嫌いのパパ活日記⑧〜⑩参照)。
懲りないのでもう一度ガルバの体入を取り付けたところ、今度こそちゃんとしたガルバに連れて行ってもらえたのでレポとして書き残そうと思う。
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都内某駅を出て大通りから路地に折れた先に、そのガールズバーはあった。
カウンター席が幾つかと、奥に女の子の待機スペース兼混雑時の客席があるだけの、細長くて小さな店だ。更に奥に一応、人1人座るのがやっとの事務所がある。恐る恐るドアを開けると、内勤さんが1番奥から手招きしていた。私は昼間から飲んでいるお客さんの背後を突っ切って、奥の待機スペースに向かった。
ピンク色の内装の可愛らしいお店だ。棚には内装に似合わぬゴツい酒が置いてあって、夜の店というかんじがした。あっ!アルマンドがある!キャッキャッ!(小学生)
「こういうお店は初めて?」
陰気な内勤さんに渡された履歴書を埋めながら、そんな会話をする。説明が面倒臭いのでピンサロの話は伏せて、初めてですと言った。ましてやパパ活の話などできるはずもないので、もっと伏せた。
「育ち良さそうだよね」
「どうしてこういうお店で働こうと思ったの?こういうとこ来るタイプに見えないからさ」
この時内勤さんに聞かれたことだが、この体験入店で同じことをあと3回くらい聞かれることになる。実際私は良くも悪くも育ちが良いし、育ちが良さそうに見える振る舞いをしていると思う。それ以外に振る舞い方を知らないといえばまぁそうなのだが。ピンサロの時にも思ったことだが、私みたいなタイプはこういうお店にはなかなかいないし、他の女の子から好奇の目で見られている気がするし、実際浮いている気がする。でも今のところ、ピンサロの女の子もガルバの女の子も異文化育ちの人間に親切であった。
実家暮らしなので22時くらいには上がりたいと言ったら、それでも雇ってくれると言う。ただ履歴書を書いた時点で20時頃だったので、体入は別の日にしようと言われた。
別日の15時に店に来る約束をして、その日は帰った。
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そして体験入店当日。
その日は履歴書を書いたのとは別の、ぽっちゃりで愛想のいい内勤さんがいた。
「3時からの(源氏名)ちゃんだね」
今まで話してきたボーイさんや内勤さん……といっても3人ほどだが、その人たちはにこやかに話していてもどこか女の子を商品としか思ってなさそうな冷たさを持ち合わせていた。が、この日の内勤さんは良くも悪くも人間と会話をしているという感があった。
まずは、店のシステムと接客方法をざっくり教えてもらう。お客さんは1時間ン千円のチャージ料金に、ワンドリンクを注文する。女の子の時給は1300円スタートでドリンクバックが何円、ボトルバックが何パーセント、など。コンカフェみたいだな、と思った。コンカフェと違うのは、チャージ料金が高いこと、ワンドリンクを飲むのがお客さんではなくキャストであることだろうか。
一通りのことを教わると、貸し衣装に着替える。パンツがギリギリ見えるか見えないかの短い丈のワンピースで、丈の話だけするならピンサロといい勝負だ。くすみピンクの生地に黒レース、早い話が地雷系の衣装だった。
やったー!!!!!これで私も地雷女だ!!!!!!!!!!!!!!!!!!(バカ高テンション)(クソデカボイス)
ツイッターで500年前から「地雷女になりたい……」とぼやいていた昼間の信号機は大喜びであった。貸し衣装なので多少レースがほつれていたがまぁその辺はご愛嬌である。トイレで着替えをしたので自撮りをしてから出るか迷ったが、着替え待ちのキャストがいたので思いとどまった。
「お客さんについてない時は外でキャッチをしてもらうから」
そう言って看板を持たされ、キャストの子と一緒に外に出た。キャッチの立ち位置は3パターンほどで決まっており、私たちは肉屋前と呼ばれているポジションに向かった。厚底の貸しシューズが非常に歩きづらかった。
この日は天気が悪く、私たちは傘を持ってキャッチをすることになった。このとき時間は3時半頃。天気が悪い上に、こんなに日のあるうちから女の子のいる店で飲もうなんて輩はなかなかいない。というかいない。
「っていうかね、キャッチしようとしまいと来る客は来るし来ない客は来ないから」
というのがペアになったキャストの言い分だった。私たちは看板を持ったまま、雑談に花を咲かせることとなった。スマホを触っているのが内勤さんに見つかると罰金があるので、喋ることくらいでしか暇を潰せないのだ。
「今おいくつですか?」
「21だよ」
「そうなんですね!私18です。今は何されてるんですか?」
「ニートだよ!」
あまりにも元気に答えられたので、赤いパーカーを着たCV櫻井孝宏の幻覚が見えた。
「昼職見つかるまでの繋ぎで働いてるんだよね。大学は中退したんだ〜私には向いてなかった」
あっけらかんと言う彼女。酔っていると言っていたので、それもあるのかもしれない。
それから彼女と趣味の話なんかをして、たまに思い出したように「こんにちは〜ガールズバーいかがですか〜」の気のない声を出した。こんなんで時給1300円出るんだからたまらねぇな。
最初はそんなかんじでお気楽に時給1300円を享受していたものの、小降りだった雨がだんだん強まり、強風に雷まで鳴り出して、衣装は濡れるしそもそも脚出してるしで様々なものがヤバくなり始めた。具体的には体温、傘、強風で見えそうになるパンツなどだ。
「あの」
「何?」
「これって何時になったら店内に入れるとかないんですか?」
「ないよ!客引くか退店時間になるかするまで一生このまま!!」
「嘘じゃん……」
こうして一気に労働環境が過酷になり、私たちは店内に入る努力をした。
「こんにちは〜ガールズバーいかがですか〜!(3オクターブ上)」
「雨宿りしていきませんか〜! 1時間飲み放題n千円で〜す!!(5オクターブ上)」
しかし、こんな悪天候の中わざわざガルバで雨宿りする人間などなかなかいない。というかいない。当たり前である。
我々の努力も虚しく、雨風はどんどん強くなっていく。そして──
バキッ!
という音と共に、傘は傘だったものになり、ついでにスカートがめくられて、我々はちょっとえっちな濡れ鼠になった。
ペアの彼女が内勤さんに電話をして、傘を持ってきてもらった。店に入りたいですと彼女が言うと、内勤さんは上に掛け合ってみるよと答える。キャッチの1人や2人引っ込めるのにも上の許可が要るなんて、大変な世界だなぁ……と思った。
【続く】
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